2025年1月10日 高橋忠栄
第6回は植物園で開催中の企画展示「新春の華展~冬を彩る花と植物園コレクション~」から、ツバキ・サザンカを取り上げます。今回は普段植物園のバックヤードで育てている貴重なコレクションを公開しています。
①展示の様子 |
1.ツバキ・サザンカの概要
ツバキの仲間の原産地はアジアの南東部で、東は日本、西はネパールから南はインドネシアに至る地域に約250種が分布しています。緑茶、紅茶の材料となるチャ、椿油や染色に利用されるヤブツバキ、種子から油をしぼるユチャ(油茶)など有用な植物が多く、地域経済にとっても重要な植物として利用されてきました。
日本にはチャ、ヤブツバキ、ユキツバキ、サザンカ、ヒメサザンカの5種が自生しており、ツバキやサザンカは花の少ない時期に咲く花として親しまれてきました。江戸時代には品種改良によって多くの園芸品種が作り出され、それが欧米に渡ってさらに品種改良が重ねられて洋種ツバキと呼ばれる華やかな大輪品種が数多く作り出されています。日本ではツバキが茶の文化と深く結びつき、侘び寂びという美意識の下で質素な花が好まれることを考えると、花に対する好みの違いが表れていて興味深いです。
国内の自生地を見ると、ヤブツバキは青森県以南、ユキツバキは東北から北陸の日本海側、サザンカは四国や九州以南、ヒメサザンカは沖縄となっています。本県にはヤブツバキとユキツバキが自生しており、ユキツバキは昭和41年に「新潟県の木」に制定されています。そのイメージが強いためか少し意外な気もしますが、ツバキの仲間は元々熱帯や亜熱帯で生まれ、日本に渡来して変化を遂げながら北方に分布域を広げていったようです。
(1) 新潟県に自生するツバキ
本県に自生するヤブツバキとユキツバキを比較すると次の表のようになります。ユキツバキはヤブツバキが多雪地帯に適応したものと考えられ、ヤブツバキの亜種とされることもありますが、現在は別の種とする考え方が主流のようです。花の開き方や雄しべの形状で見分けることができます。
また、ヤブツバキとユキツバキの分布が接する地域には中間的な形質を持つユキバタツバキ(雪端椿)が自生しており、自然交雑によって生まれたものと考えられています。
ヤブツバキ【ツバキ科】 | ユキツバキ【ツバキ科】 | |
---|---|---|
自生地 | 青森県~沖縄県 低山、山すそ、海辺 |
秋田県~滋賀県北部の日本海側 多雪地の山地、山すそ |
開花期 | 2~4月、11月頃にも咲く | 4~5月 |
形 態 | 常緑高木、高さ5~6m。樹皮は灰白色で滑らか。 花は赤色で径5~6㎝、一重のラッパ咲きで花弁が厚く、雄しべは筒状。 |
常緑低木、高さ1~2m。枝はしなやかで折れにくく、積雪下で越冬する。 花は濃紅色で径6~7㎝、一重の平開咲きで花弁は薄く、雄しべが梅の花のように広がる。 |
備 考 | 現在の阿賀町で発見され、牧野富太郎博士が命名したという記録が残る。 | |
写 真 | ||
(写真:「NHK趣味の園芸 ツバキ、サザンカ」より) |
(2) ツバキとサザンカ
次に、ツバキとサザンカの違いをまとめると次の表のようになります。よく知られているのは花の散り方でしょうか。ツバキは花ごとポトリと落ちることから「首が落ちる」を連想させて縁起が悪いと言われることがあります。
ただ、いずれも多くの園芸品種がつくり出される中で様々な変化が生じ、これらが当てはまらないものも増えていて、区別が難しくなっているようです。
ツバキ【ツバキ科】 | サザンカ【ツバキ科】 | |
---|---|---|
開花期 | 気温の上昇に反応して開花するため春に咲くものが多いが、秋に咲く品種もある。 | 気温の低下に反応して開花するため秋に咲くものが多い。 |
形 態 | 雄しべが筒状で花弁の基部と癒着するため、花が散るときは花ごと落ちる。 | 雄しべと花弁が癒着しないため、花が散るときは花弁が一枚一枚落ちる。 |
葉は大型で毛がなく、光沢が強い。 | 葉は小型で主脈と葉柄に毛があり、光沢は弱い。 | |
果実は大きくて毛がない。 | 果実は小さくて毛がある。 |
2.県立植物園のツバキ・サザンカ
(1) 植物園のツバキ・サザンカコレクション
当園では国内外のツバキの野生種、日本で作り出された園芸品種などを中心にツバキやサザンカの収集、保全を行っており、今回は当園が保有するコレクションの3分の1にあたる約40品種を展示しています。
ツバキの園芸品種にはヤブツバキ系、ユキツバキ系、トウツバキ系、ワビスケ系があり、サザンカの園芸品種にはサザンカ系、カンツバキ系、ハルサザンカ系があります。中でもヤブツバキ系は花形が豊富で樹形も整えやすいことからツバキの品種の中心となっています。さらに種間雑種も数多く作り出され、品種の構成が複雑になっています。
②植物園のツバキコレクション |
ここでは花色に着目して今回展示しているツバキの一部をご紹介します。なお、写真は過去に開花した際の写真です。開花時期は品種によって異なり、そろって開花している様子を見ていただくのは難しいと思いますので、ご了承ください。
(ロンギカウダータ・中国) |
(アザレアツバキ・中国) |
(ロサエフローラ・中国) |
(テマリツバキ・中国) |
(油茶・中国) |
(グランサムツバキ・香港) |
(クックフォンゲンシス・ベトナム) |
(インプレシネルヴィス・中国) |
③今回展示しているツバキ |
(2) 熱帯植物ドームのツバキ
熱帯植物ドームでは、ケラマツツジやセイシカ(聖紫花)など熱帯性のツツジやシャクナゲを多く植栽していますが、熱帯性のツバキであるカイドウツバキ(海棠椿)も冬の温室で目を引く花を咲かせます。
ベトナム原産で別名をハイドゥン(Hi Duong)ツバキといい、小さな毬のような蕾から花弁が厚くて作り物のように見える桃紅色の花を咲かせます。ベトナムではテト(旧正月)を祝う花として使われるそうです。
④カイドウツバキ(蕾と花) |
(3) ツバキ園の萩屋薫コレクション
園内では少し目立たない場所にありますが、ツバキ園では新潟大学名誉教授だった故萩屋薫博士から寄贈されたツバキが、秋から春にかけて次々に花を咲かせます。博士はユキツバキの変異個体1,500以上を収集し、150品種に命名しました。チューリップやシャクヤクなどの新品種も多数発表しており、国内外で高い評価を得ています。
ツバキ園のツバキは博士が国内外の野生種や園芸品種を交配したもので、花が甘く香るもの、ピンクなどやさしい色合いのものが多いのが特徴です。ただ、残念ながら品種改良の途中で博士が亡くなられたため品種名がつけられておらず、どのように作出されたかが分かる資料も残されていません。
⑤ツバキ園 |
今回は「新春の華展」からツバキ・サザンカを紹介しましたが、会場では他にもパンジー・ビオラ、アザレアなど冬を彩る花々を展示しています。植物園はこれから2月のアザレア、3月のチューリップ、4月~5月のシャクナゲ・ツツジと年間を通して最も華やかな時期を迎えます。新潟を代表する花の競演をお楽しみください。
⑥アザレアの展示 |
新潟県立植物園 企画展示「新春の華展」
開催期間:1月4日(土)~2月2日(日)
県立植物園HP https://botanical.greenery-niigata.or.jp/
(挿入写真)
①②⑥:筆者撮影
③~⑤:県立植物園
(参考文献)
横内茂 編「最新椿百科」(淡交社、2022年)
桐野秋豊・箱田直紀「NHK趣味の園芸 ツバキ、サザンカ」(NHK出版、2001年)
山本敏夫「新潟県樹木図鑑」(新潟日報事業社、1993年)
(執筆者)
高橋 忠栄
新潟県立植物園 園長
技術士(総合技術監理部門・建設部門)
元 村上地域振興局長
※)当サイトの内容、画像等の無断転載を禁止します。
2024年12月1日 高橋忠栄
第5回は植物園で開催中の企画展示「クリスマス展」を取り上げます。今年7月、関係者の皆様の長年の努力が実って「佐渡島の金山」が世界文化遺産として登録されました。それをお祝いし、今年のクリスマス展は「クリスマス展~ゴールデンパーティー~」と題してクリスマスを彩る植物や「金」に関連した植物を展示しています。
①展示の様子 |
1.クリスマスを彩る植物
① クリスマスツリー・リース(コニファー)
クリスマスと植物と言えば、まず思い浮かぶのがクリスマスツリーではないでしょうか。クリスマスツリーには一般的にモミやトウヒなどの常緑針葉樹が使われますが、その理由は一年中葉を茂らせる常緑樹が「永遠の命」や「強い生命力」を象徴するものとされているからです。
クリスマスツリーに飾るオーナメントにもそれぞれ意味があり、一番上の星はキリストの誕生を知らせた「ベツレヘムの星」、ボールは知恵の木の実とされるリンゴ、ヒイラギはキリストが十字架で被せられたいばらの冠を表すなどとされています。
日本では人工樹のクリスマスツリーを飾る家庭が多いと思いますが、現在は手軽に色々なコニファーの鉢植えを入手することができるようになり、生きたクリスマスツリーを飾る家庭も増えているようです。
②クリスマスツリー |
玄関などに飾られるクリスマスリースにもコニファーなどの常緑樹が使われます。始まりも終わりもない丸い形は「永遠」の象徴とされ、リースの飾りとして、魔物から身を守ってくれるとされるヒイラギ、収穫を意味する松ぼっくりやブドウの蔓、麦の穂などを使用することから、魔除けや豊作祈願の意味も込められているとのことです。
③トキがいるクリスマスリース |
コニファーは北アメリカやヨーロッパを原産とする針葉樹の総称で、緑色、明るい黄緑色や黄金色、シルバーがかった銀青色など葉色が豊富なこと、円錐形、半球形、ほふく形など樹形が多様なこと、枝や葉から爽やかな香りを放つものが多いことなどが特徴です。刈り込んで人工的な形に仕立てるトピアリーに使用されることもあります。植物園ではコニファー園でも楽しんでいただくことができます。
④植物園のコニファー園 |
②ポインセチア【トウダイグサ科】
ポインセチアはメキシコが原産で、名前は米国の駐メキシコ大使だったポインセット氏がメキシコから持ち帰ったことに由来します。その後、ヨーロッパなどに広まり、クリスマスに飾られるようになりました。その理由はクリスマスカラーと言われる赤・緑・白の3色を含んでいるからだと言われています。花びらのように見える苞(ほう)の赤はキリストの血、葉の緑は常緑樹に代表される永遠の命や強い生命力、樹液の白は純粋無垢を表します。
苞は花を保護する機能を持った葉の一種で、苞に囲まれた粒状の部分が花です。花びらはありません。鮮やかな赤の苞がポインセチアの特徴ですが、品種改良によってピンク、白、黄、斑入りなど様々な苞色の品種が育てられるようになっています。
ポインセチアは鉢植えのイメージが強く、草花のように思われることもありますが、地植えでは2~3mに成長する常緑低木です。ただ、冬の寒さに耐えられないため、国内で屋外でも育てられるのは九州南部など温かい地域に限られます。
⑤様々な色のポインセチア |
③シクラメン【サクラソウ科】
シクラメンは地中海沿岸が原産の多年生の球根植物です。名前はギリシャ語で「円」や「回る」を意味する「キクロス」に由来します。英語の「サイクル」と同意で、原種のシクラメンが結実すると花茎が螺旋状に巻くことからこの名前がつけられました。
日本に渡来したのは明治時代で、豚が地下茎を好んで食べるためヨーロッパで「豚のパン」と呼ばれていたことから、和名は「豚の饅頭」とつけられました。現在、ヨーロッパでは「アルプスのスミレ」と呼ばれているということですので、ずいぶん印象が違います。花びらが反り返って咲く形が燃える炎に似ているため「カガリビバナ」の別名もあり、これは牧野富太郎博士の命名によるものです。
ポインセチアと同様、クリスマスカラーの赤や緑を含むことからクリスマスの花とされているようです。赤、白、ピンク、紫など花色が豊富で、フリルが入るフリンジ咲きや八重咲きの品種もあり、ハート形の葉も特徴です。
1970年代に「シクラメンのかほり」という曲がヒットしましたが、現在出回っている園芸品種のシクラメンには香りがありません。ただ、野生種には香りがあるものがあり、その香りをとり入れた「芳香シクラメン」の育成も行われるようになっています。
⑥会場を彩るシクラメン |
④クリスマスローズ【キンポウゲ科】
クリスマスを彩る植物の最後にクリスマスローズをご紹介します。ただ、クリスマスローズが開花するのは3月~4月で、「クリスマスに咲かないのになぜクリスマスローズと呼ぶの?」という疑問がよく聞かれます。
キンポウゲ科クリスマスローズ属に分類される植物は「ヘレボルス」と総称され、クリスマスローズの名前は、実際にクリスマスの頃に開花する「ヘレボルス・ニゲル」に由来します。一重咲きで白バラに似た花をつけ、欧米ではこの種だけをクリスマスローズと呼ぶようです。
日本で一般的にクリスマスローズと呼ばれているのは「ヘレボルス・オリエンタリス」で、欧米ではキリスト教のレント(四旬節:復活祭前の40日間)の頃に咲くことから「レンテンローズ」と呼ばれています。多くの交配種が作出されており、豊富な花色と花形が魅力です。日本では親しみがあるクリスマスの名前が広く使われるようになったのでしょうか。
県立植物園がある新潟市秋葉区はクリスマスローズの一大産地で、春になると園内でもクリスマスローズを楽しむことができます。
⑦植物園のクリスマスローズ(2023/4/23撮影) |
2.「金」に関連した植物
① 名前に「金」を持つ植物
今回の展示では、佐渡金山に因んで名前に「金」や「ゴールド」を持つ植物を紹介しています。葉や花に金色を思わせる色味を持つ植物たちです。開花時期の関係もあって今回は展示していませんが、おなじみのマリーゴールドなどもそれを代表する花の一つだと思います。
【名前に「金」を持つ植物(一部)】
分類 | 植物名 | 科名 |
---|---|---|
高木・中低木 | ゴールドクレスト | ヒノキ科 |
ドラセナ コンシンネ ゴールド | リュウゼツラン科 | |
ゴールデンヘデラ | ウコギ科 | |
多年草・一年草 | ユーフォルビア ゴールデンレインボー | トウダイグサ科 |
マイクロシクラメン ゴールデンガール | サクラソウ科 | |
ビデンス(ウインターコスモス) ゴールデンエンパイア | キク科 | |
多肉植物 | 金のなる木 | ベンケイソウ科 |
エケベリア ゴールデングロー | ベンケイソウ科 | |
セダム オウゴンマルバマンネングサ | ベンケイソウ科 | |
サボテン | 黄金司、金獅子、金晃丸、金星、金鯱 | サボテン科 |
⑧名前に「金」を持つ植物 |
② 「お金」に描かれた植物
2024年7月、新しい紙幣が発行されました。紙幣や硬貨には日本の発展に貢献した人物や日本を代表する風景が描かれていますが、今回の展示ではそこに描かれた植物を紹介しています。桜をはじめ日本らしい植物の名前が並びます。
【紙幣】(人物と植物)
旧 | 新 | |
---|---|---|
一万円 | 福澤諭吉 | 渋沢栄一 桜 |
五千円 | 樋口一葉 牡丹 | 津田梅子 桐、藤(裏面) |
千円 | 野口英世 桜(裏面) | 北里柴三郎 桜 |
【硬貨】
五百円 | 桐、竹、橘 | 十円 | 唐草、常盤木 |
百円 | 桜 | 五円 | 稲穂、双葉 |
五十円 | 菊 | 一円 | 若木 |
今回は「クリスマス展~ゴールデンパーティー~」をご紹介しました。私事で恐縮ですが、佐渡地域振興局に勤務していたとき佐渡金銀山の世界遺産登録に向けた事業に関わっていたこともあり、今回の登録は本当にうれしく思っています。会場では「世界遺産『佐渡島の金山』」についても紹介していますので、ぜひ足をお運びください。
⑨金山で坑内の排水に使われた「水上輪」(レプリカ) |
新潟県立植物園 企画展示「クリスマス展 ~ゴールデンパーティー~」
開催期間:11月20日(水)~12月25日(水)
県立植物園HP https://botanical.greenery-niigata.or.jp/
(挿入写真)
筆者撮影
(参考文献)
WEBサイト「かぎけん花図鑑」(株式会社科学技術研究所)
WEBサイト「みんなの趣味の園芸」(株式会社NHK出版)
(執筆者)
高橋 忠栄
新潟県立植物園 園長
技術士(総合技術監理部門・建設部門)
元 村上地域振興局長
※)当サイトの内容、画像等の無断転載を禁止します。
2024年11月1日 高橋忠栄
第4回はコーヒーを取り上げます。植物園でコーヒー?と思われるかもしれませんが、当園では生活に身近な植物としてコーヒーノキの栽培や活用に力を入れており、2022年の「コーヒー&カカオ展」、2023年の「飲む発酵展」など、コーヒーを取り扱った企画展示も実施しています。植物としてのコーヒーノキや身近な飲み物としてのコーヒーについてご紹介したいと思います。
1.植物としてのコーヒーノキ
(1) コーヒーノキとは
コーヒーノキはアカネ科コーヒーノキ属の常緑樹で、現在100種類を超える種が知られています。その中で飲料として利用されるのはアラビカ種、ロブスタ種(カネフォラ種)、リベリカ種の3種類で、これらは「コーヒーの三原種」と呼ばれます。アカネ科の植物には染料の原料となるアカネ、薬用や着色料として利用されるクチナシなどがありますが、最も人の生活に関わりが深いのがコーヒーノキと言えそうです。
①植物園のコーヒーノキ(アラビカ種) |
①アラビカ種 ~ アラビアコーヒーノキ
アラビカ種はエチオピアの高原が原産で、気温が比較的低い標高1,000~2,000mの高地での栽培に適しています。優れた香りと適度な酸味を持つことから世界各地で栽培され、世界のコーヒーの全生産量の約6割~7割を占めています。主にレギュラーコーヒーとして利用され、産地や品種などの名称で呼ばれるのはこのアラビカ種のコーヒーです。葉は光沢がある濃緑色で、観葉植物としても栽培されています。
②ロブスタ種(カネフォラ種) ~ ロブスタコーヒーノキ
ロブスタ種は「頑強な」という意味のロブスタという名前が示すように耐病性に優れ、低地でも栽培が可能で収量が多いのが特徴です。中央アフリカ原産で、現在はインドネシア、ベトナム、インド、ブラジル、西アフリカなどを中心に栽培されています。品質や香りはアラビカ種に及びませんが、ブレンドの材料やインスタントコーヒー、缶コーヒーの加工原料などとして利用が増えており、現在は全生産量の3割~4割を占めています。
③リベリカ種 ~ リベリアコーヒーノキ
リベリカ種はアフリカ西海岸のリベリア原産で、西アフリカやフィリピン、マレーシアの一部で生産されています。香味の評価はアラビカ種より劣り、耐病性はロブスタ種より劣ります。生産量はごくわずかで、日本ではほとんど目にすることがありません。
コーヒーノキは甘い香りを持つ白い花をつけ、花が咲いてから2ヶ月ほどで緑色の果実になります。果実は熟すにしたがって赤色から黒色になり、形がサクランボに似ていることからコーヒーチェリーと呼ばれます。果実の中には2つの種子が入っており、この種子がコーヒー豆になります。コーヒー豆の構造については後ほど詳しくご説明します。
②コーヒーノキの花 |
③コーヒーノキの果実 |
(2) コーヒーノキの分布と栽培の歴史
コーヒーが栽培されているのは赤道を中心とした南北緯度25度以内に限られ、その範囲は「コーヒーベルト」と呼ばれます。元々コーヒーノキが自生していたのはマダガスカル島を含むアフリカ大陸と南・東南アジアの一部で、現在コーヒーベルトで栽培されているのは大半が人為的に導入された栽培品種です。
コーヒーの産地というと中南米やアフリカが思い浮かびますが、アジアにも主要な産地があり、ベトナムはコーヒー豆の生産量がブラジルに続く世界第2位、インドネシアは第3位となっています。
④コーヒーベルトとコーヒー生産上位20国 |
コーヒーの利用が始まったのはアラビカ種の原産地のエチオピアと言われ、それがアラビア半島のイエメンに伝わって、15世紀中頃に本格的に栽培されるようになったようです。当時はコーヒーの生産を独占するため苗木や種子の持ち出しが禁止されていたとのことですが、17~18世紀に国外に持ち出され、様々なルートで世界中に伝播していきました。
その伝播の過程では、数本の苗木や数粒の種子からコーヒーノキの栽培に成功し、産地として成長した地域が少なくありません。中には1本の苗木、1粒の種子で伝播することもあったようです。このように栽培が広がったのは、アラビカ種は自らの花粉で種子をつくることができる自家受粉型の植物であることが大きな要因だと思われます。このような植物の性質がコーヒーという一つの文化の成り立ちに関わっていることはとても興味深いです。
ロブスタ種が発見されたのはずっと遅く、19世紀末になります。その後、病虫害に強いことや高温多湿の環境でも栽培可能なことからアラビカ種の栽培が難しい地域などに広がっていきました。
2.飲み物としてのコーヒー
(1)コーヒーの産地と品種
コーヒーの名前というと「ブラジル」、「モカ」、「キリマンジャロ」などを思い浮かべる方が多いと思いますが、これらは主に産地に由来するものです。ブラジルは世界最大のコーヒーの産地ですし、モカはアラビア半島にあったモカ港から出荷されたことに由来します。キリマンジャロはアフリカの最高峰キリマンジャロ山の中腹で栽培されたコーヒーです。さらに細かい産地の地名や生産した農園の名前がついている場合もあります。
また、コーヒーには種の下位に数多くの品種があります。特にアラビカ種には「二大原品種」と呼ばれる「ティピカ」や「ブルボン」をはじめ数十種類の品種があり、最近は「ゲイシャ」(※)など高品質な品種の人気も高まっています。これらの在来種に加え、突然変異種、自然交配種、人工交配種も数多く生まれています。
コーヒーの味わいは産地や品種によって異なります。コーヒーの専門店に行くと様々な名前があって戸惑うことがありますが、その由来を一つ一つ確かめながら飲み比べるのも一つの楽しみ方かもしれません。
※)ゲイシャ:エチオピア南部のゲイシャ(またはゲシャ)で発見された野生種由来の品種。独特の柑橘系の香りを持つ。
(2)コーヒーができるまで
次に、コーヒーノキの果実から飲み物としてのコーヒーができるまでの工程をご紹介します。それは果実から生豆を取り出す「精製」、生豆を加熱して味や香りを作り出す「焙煎」、焙煎した豆から成分を引き出す「抽出」です。
①精製
コーヒーノキの果実は下図のような構造になっています。精製は果実から果皮、果肉などを取り除いて生豆を取り出す工程です。
⑤コーヒーの果実の構造 |
精製には大きく分けてナチュラル(乾燥式)とウォッシュド(水洗式)の2つの方法があります。
ナチュラルは果実をまるごと天日乾燥させた後に脱穀して果皮、果肉、パーチメントを取り除き、生豆を取り出す方法です。乾燥工程の中で果実の発酵が進んでコクがある味わいになり、香りも濃厚になります。最も古くから行われている方法で、水の便が悪い地域などでは現在も主流のようです。
一方、ウォッシュドでは専用の器械で果皮と果肉をはぎ取った果実を水槽に浸け、残ったムシラージ(粘質物)を発酵によって分解させた後、もう一度水洗いして表面の付着物を洗い流します。この段階ではまだパーチメントが残っていますが、産地ではこの状態で保管して輸出する前に脱穀して除去しているようです。現在多くの地域で主流となっている方法で、果肉層を完全に除去することでスッキリとした味わいになります。
このように精製の工程には発酵が大きく関わり、味の違いを生み出しています。2023年に開催した「飲む発酵展」では、会場でナチュラルとウォッシュドの飲み比べを行い、精製方法の違いによる味の違いを体験していただきました。
②焙煎
焙煎は生豆を加熱してコーヒーの味や香り、色を作り出す過程です。生豆は焙煎することで褐色、黒褐色と色が変わり、香ばしい匂いと苦みを持つようになります。
コーヒーの味は酸味と苦味が特徴ですが、酸味は焙煎を始めると間もなく生まれ、焙煎が進むにつれて酸味が減って苦みが生まれます。そのため、浅煎りは酸味が強く、深煎りは苦みが強くなります。焙煎度合いは、最も焙煎時間が短いライトローストから、最も焙煎時間が長いイタリアンローストまで8段階に分類されます。
コーヒーと言えば苦い飲み物というイメージが強かったと思いますが、質の高いスペシャルティコーヒーの登場もあり、浅煎りのさわやかな酸味や素材そのものの風味を楽しむ人も増えているようです。
③抽出
抽出は焙煎した豆からお湯で成分を引き出す工程です。抽出の方法には、コーヒーの粉にお湯を注ぐ「透過法」、コーヒーの粉をお湯に浸す「浸漬法」、圧力をかけながら短時間で粉にお湯を注ぐ「加圧法」があります。同じ豆を使用しても抽出方法、豆の量や挽き方、お湯の温度などで味わいに大きな違いが出ます。
透過法の代表的な方法が日本で最も親しまれているペーパードリップです。コーヒーに含まれるオイルがペーパーで取り除かれるためクリアな味わいになります。布のフィルターを使ったネルドリップも透過法です。
浸漬法の代表的な方法がフレンチプレスです。細長いガラス製の専用器具で抽出するもので、ペーパードリップでは取り除かれるオイルも残るためコーヒーの成分を丸ごと楽しめます。喫茶店などで親しまれてきたサイフォンも浸漬法です。
加圧法の代表的な方法がエスプレッソです。専用のエスプレッソマシンを使うのが一般的で、濃厚な味わいが特徴です。ミルクと合わせてカフェオレやカプチーノとしても飲まれ、フランスやイタリアで親しまれています。
抽出は私たちも自分で色々と試してみることができる工程です。豆の選択と合わせ、自分の好みの味を探してみてはいかがでしょうか。
(3)植物園産コーヒーの試み
最後に植物園での取組をご紹介します。植物園では、園内のカフェLAGUNAの協力を得て、熱帯植物ドームのアラビアコーヒーノキから収穫したコーヒー豆を用いたコーヒーの試作を行いました。関係者で開催した試飲会では同じブルボン種のブラジル産の豆との飲み比べを行い、「思いのほか(?)おいしい」との評価をいただきました。
収量の関係もあり、常時来園者の皆様に提供することは難しいですが、イベントや教室、企画展示等の際に提供できればと考えています。植物園には現在ほとんど流通していないリベリアコーヒーノキもありますので、その豆で淹れたコーヒーも提供できればと夢が広がります。
⑥植物園産コーヒーの試作 |
今回はコーヒーについて書かせていただきましたが、植物園のカフェLAGUNAでは、企画展示に合わせた限定ブレンドのコーヒーを提供しています。11月17日(日)まで開催中の「源氏物語から読み解く平安の花」の限定ブレンドには、「権力争いと愛憎渦巻く味わい」という少し妖しげなコメントがつけられています。展示と併せてお楽しみください。
県立植物園HP https://botanical.greenery-niigata.or.jp/
(挿入写真・図)
①:筆者撮影
②~⑥:県立植物園
(参考文献)
旦部幸博「コーヒーの科学」(講談社、2016年)
旦部幸博「珈琲の世界史」(講談社、2017年)
井崎英典「コーヒーを楽しむ教科書」(ナツメ社、2020年)
(執筆者)
高橋 忠栄
新潟県立植物園 園長
技術士(総合技術監理部門・建設部門)
元 村上地域振興局長
※)当サイトの内容、画像等の無断転載を禁止します。
2024年10月1日 高橋忠栄
第3回は植物園で開催中の企画展示「源氏物語から読み解く平安の花」を取り上げます。現在、NHKでは源氏物語の作者である紫式部が主人公の大河ドラマ「光る君へ」が放送されています。源氏物語では、風景や宮中文化の描写、人々が思いを伝えあう和歌などに植物が効果的に使われ、登場する植物は100種類を超えます。その描き方はとても細やかで、紫式部が植物をよく知り、観察していたことが伺えます。
今回の展示では、源氏物語に登場する植物に焦点を絞り、物語と植物の関係性を紐解いています。
①展示の様子 |
1. 源氏物語の登場人物と植物
源氏物語では登場人物の多くが植物と関連づけて描かれ、植物の名前をつけられた人物も少なくありません。主な登場人物がどのように描かれているかをご紹介します。
①光源氏 ~ ヤマザクラ(山桜)【バラ科】
源氏物語の主人公で、桐壺帝を父に持ち、自身も帝になる可能性がありましたが、父帝によって臣下の身分に降ろされ、その可能性を絶たれます。物語は源氏の華やかな女性関係と政界での活躍を描きながら進みます。
源氏物語は源氏の恋愛模様を描いた小説として知られますが、これほど長く読み継がれてきたのは、源氏が高い教養を身につけ、才能を開花させて上皇に準じる地位まで昇り詰めた立身出世の物語が、後の貴族や武家の社会に受け入れられたという面もあるようです。
「光る君」の言葉に表されるように、源氏の容姿の美しさは再三描かれますが、第7帖「紅葉賀(もみじのが)」では、ライバルである頭中将(とうのちゅうじょう)と共に舞う源氏を「花」に例えています。花の種類は明記されていませんが、その花を「サクラ」とする訳本が多く、当時の人々が都で見ていたサクラは「ヤマザクラ」だったようです。
第7帖「紅葉賀」より
「源氏中将は、青海波をお舞いになった。一方の舞手には大殿の頭中将。容貌、心づかい、人よりは優れているが、立ち並んでは、やはり花の傍らの深山木である。」
※)光源氏を「花」、頭中将を「深山木」に例えたもの。
②オオヤマザクラ |
②紫の上 ~ ハス(蓮)【ハス科】
物語に数多く登場する女君(おんなぎみ)の中で、最も長く源氏を支え続けたのが紫の上です。京都郊外の北山の寺で育てられていた10歳のとき、病気治療のために訪れた源氏と出会い、その後源氏に引き取られて二条院で大切に育てられます。やがて源氏の事実上の正妻として、源氏の女性関係に悩みながらも生涯を共に過ごします。
源氏が一時失脚して明石に滞在したとき「明石の君」との間にもうけた娘「明石の姫君」を引き取って育て、成長した姫君が東宮妃として入内する際は、わが子と長く離れて暮らした明石の君の心情を思って後見人の座を譲るなど、優しい人柄の女性として描かれます。
第35帖「若菜下(わかなげ)」では、体調を崩した紫の上を源氏が訪ね、池に咲く蓮を見ながら歌を交わし、心を通わせあう様子が描かれています。
第35帖「若菜下」より 病床の紫の上が源氏に贈った歌
「消えとまる ほどやは経べき たまさかに 蓮の露の かかるばかりを」
(露が消えずに残っている間だけでも生きられるでしょうか、たまたま蓮の露がこのように残っているだけの命ですから)
③ハス |
③頭中将 ~ フジ(藤)【マメ科】
源氏の最初の妻・葵の上の兄であり、親友として、また政界のライバルとして、様々な場面で源氏の人生に深く関わってくるのが頭中将です。頭中将は役職名で、他の登場人物と同様に本名は明かされていません。作中では出世に従って呼び名が変わり、最後は太政大臣にまで上り詰めます。
第7帖「紅葉賀」で源氏と共に舞ったとき、源氏が「花」に例えられたのに対し、頭中将は「深山木(山林の樹木)」に例えられました。華やかな源氏に対し、無骨で男気がある存在として描かれています。
物語で重要な役割を果たす柏木、雲居の雁(くもいのかり)、玉鬘(たまかずら)の父親でもあり、第33帖「藤裏葉(ふじのうらば)」には、長く反対していた娘・雲居雁と光源氏の息子・夕霧の結婚を認める場面があります。ここでは、頭中将、夕霧、柏木が藤の花を取り入れた歌を交わします。
第33帖「藤裏葉」より 頭中将が夕霧を自邸に誘った歌
「我が宿の 藤の色濃きたそかれに 訪ねやは来ぬ 春の名残を」
(私の邸の藤の花の色が濃い夕暮れ時に訪ねていらっしゃいませんか、いく春の名残を惜しみましょう)
④フジ |
2. 源氏物語の和歌と植物
源氏物語の登場人物たちは和歌を交わすことで思いを伝えあいますが、その和歌にも植物が効果的に使われています。和歌に詠まれた植物をご紹介します。
①第21帖「少女(おとめ)」より モミジ(紅葉)【ムクロジ科】
「心から 春まつ園は わが宿の 紅葉を風の つてにだに見よ」
(あなた様の大好きな春をお待ちのお庭では、せめて私の庭の紅葉を風のたよりにでもご覧ください)
この歌は、第21帖「少女」で、六条院に暮らす紫の上のもとに、秋好中宮(あきこのむちゅうぐう)から届いた贈り物に添えられていた歌です。その贈り物は、硯箱の蓋に秋の草花や紅葉を入れたものでした。
それに対し、春を好む紫の上は、同じ硯箱の蓋に苔を敷いて岩に見立てた小石と五葉松の枝を飾り、春の美しさを表した歌を添えて返します。秋と春の競い合いのような展開です。
⑤モミジ |
②第23帖「初音」より マツ(松)【マツ科】
「引き別れ 年は経れども 鶯の 巣立ちし松の 根を忘れめや」
(別れて何年もたちましたが、鶯が巣立った松を忘れないように、私も生みの母君を忘れましょうか)
この歌は、第23帖「初音」で、母である明石の君から、源氏のもとで暮らす娘・明石の姫君に、松の枝に留まる鶯を細工した置物と新年の挨拶の歌が届けられたのに対し、姫君が返した歌です。
母親の家柄が子どもの人生を大きく左右した時代、身分が低い明石の君は、娘の将来のため源氏に託することを選びます。この歌では、離れて暮らす母と娘が、変わらずに緑を保つ松を介して変わることのない絆を表しています。
⑥ゴヨウマツ |
③第2帖「帚木」より ナデシコ(撫子)【ナデシコ科】
「山がつの 垣ほ荒るとも 折々に あはれはかけよ 撫子の露」
(山荘の垣根は荒れていても、時々は愛情をかけてやってください撫子の花に)
この歌は、第2帖「帚木(ははきぎ)」で、頭中将との間に娘をもうけた夕顔が、なかなか訪ねてこない頭中将に撫子の花と一緒に贈った歌です。撫子は小さな子どもを表し、せめて娘には愛情をかけてくださいと訴えています。
その娘が玉鬘で、第26帖「常夏」には成長した玉鬘と源氏が歌を交わす場面があります。源氏が、美しいあなたを見れば頭中将は夕顔を訪ねるでしょうと贈ったのに対し、玉鬘は身分の低い母親を誰が訪ねるでしょうと返しています。
※)帚木:遠くから望めば箒を立てたように見え、近くに寄れば見えなくなる不思議な木とされ、具体的に何を指すかは分かっていない。
⑦カワラナデシコ |
3. 平安の文化と植物
会場では、物語に登場する植物の他、平安時代に重視された香りや色と植物の関わりもご紹介しています。
①香り
平安時代にはよい香りをまとうことが貴族社会の身だしなみとされ、香を焚いて部屋に香りを漂わせたり、衣服に香りを焚きしめたりすることが盛んに行われていました。その香りに使われていたのが白檀や沈香、丁字といった植物です。
第32帖「梅枝」には、東宮に入内することとなった明石の姫君のため、源氏が女君たちに薫物(たきもの)の調合を競わせる場面があります。歌を競う「歌合」や花を競う「花合」、絵を競う「絵合」などと同様、香りを競い合う「薫物合」も貴族の娯楽として流行しました。
※)薫物:沈香や白檀などの香木と丁子や麝香などの香料を練り合わせて固めた香。
②色と襲(かさね)
平安時代といえば豪華な衣装がイメージされますが、当時は季節に合わせた衣装を身にまとうことが大切にされ、色はその重要な要素でした。使われていたのは紅花や藍、黄肌など植物由来の色です。
また、衣裳の襟や袖口、裾などは布地がわずかにずれて、それぞれの色が緩やかに重なり合い、そこに配色の妙が生まれていました。このような色の組み合わせを「かさねの色目」と呼び、その配色にも「桜襲」や「藤襲」など季節の植物の名前が当てられていました。
今回の展示では、源氏物語全54帖のストーリーを紹介しながら、物語に登場する植物を和歌やエピソードとともに展示しています。ご興味を持っていただいた方は、ぜひ会場に足をお運びください。
新潟県立植物園 企画展示「源氏物語から読み解く平安の花」
開催期間:9月11日(水)~11月17日(日)
県立植物園HP https://botanical.greenery-niigata.or.jp/
(挿入写真)
①②⑤⑥⑦:筆者撮影
③④:新潟県立植物園
(参考文献)
川崎景介「花で読みとく『源氏物語』」(講談社、2024年)
松谷茂「植物園の咲かせる哲学」(教育評論社、2022年)
松田修「古典植物辞典」(講談社、2009年)
(執筆者)
高橋 忠栄
新潟県立植物園 園長
技術士(総合技術監理部門・建設部門)
元 村上地域振興局長
※)当サイトの内容、画像等の無断転載を禁止します。
2024年9月1日 高橋忠栄
第2回では「熱帯植物ドームの植物」を取り上げます。県立植物園の観賞温室第1室「熱帯植物ドーム」は、高さ30m、直径42mの国内最大級のドーム型温室で、約550種、約4,000株の多種多様な植物が植栽されています。世界の植物に生きた状態で触れることができる、植物園の中心となる施設です。今回は、数多くの植物の中から植物園でなければ見ることができない植物をご紹介したいと思います。
①ダイオウヤシ【ヤシ科】
熱帯植物ドームの中央に最も高くそびえ、温室のシンボルとも言える姿を見せているのがダイオウヤシ(大王椰子)です。中南米~北米フロリダ州に自生し、ヤシの仲間で最も大きくなることが名前の由来だそうです。温室には他にもココナッツがなるココヤシ、果実が薬用として使われるビンロウなどのヤシ科の植物が植えられています。温室に入ってすぐの洞窟の階段を上った展望スペースから見ると、その姿がよく分かります。
2024年の春までダイオウヤシは2本並んでいましたが、1本に傾きが確認されたことから倒れる危険性があると判断し、残念ながら5月に伐採しました。伐採したヤシはその後しばらく展示し、普段は見ることができない細部や断面を間近に見ていただきました。
開園から25年が経過し、ダイオウヤシは温室の天井近くに達しています。ヤシは剪定で高さを抑えることができませんので、このヤシも遠からず伐採が必要な時期を迎えてしまうかもしれません。
①ダイオウヤシ |
②オウギバショウ(タビビトノキ)【ゴクラクチョウカ科】
オウギバショウ(扇芭蕉)の名の通り、長い柄を持つ葉が扇のように広がり、その特徴的で大きな姿は温室内でもよく目立ちます。 原産地はアフリカ大陸の東南沖に浮かぶマダガスカルで、マダガスカルはバオバブの巨木が並ぶ風景でもよく知られています。
別名のタビビトノキ(旅人の木)の由来には、葉の付け根に溜まった雨水を旅人が飲み水として利用したという説と、日照を好む植物で葉が南方向を向くよう東西に葉を開くことから方向を示すコンパスの役割を果たすという説があるようですが、いずれも定説となっているものではありません。
ストレリチア(ゴクラクチョウカ)に似た白い花が咲き、インテリアとしても使われる美しい青色の種子(※)をつけます。自生地ではこの花の蜜を好むエリマキキツネザルが花粉を媒介しているとのことですが、当園では人工授粉によって2021年に初めて結実しました。その果実も温室で展示しています。
※)青色の仮種皮(種子の表面を覆う膜)で覆われた種子で、種子自体は黒褐色。
②オウギバショウ(タビビトノキ) |
③ガジュマル【クワ科】
ガジュマルは熱帯・亜熱帯に分布し、日本では沖縄、種子島、屋久島などに自生します。沖縄では妖精キジムナーが住む木とされ、キジムナーは幸せをもたらすとされていることから、ガジュマルは「幸せの木」と呼ばれます。
一方、ガジュマルは鳥などによって運ばれた種子を他の樹木(宿主)の上で発芽させ、宿主を覆うように気根を伸ばして成長し、やがて宿主を枯らしてしまうことから「絞め殺しの木」とも呼ばれます。太い気根を絡ませた姿はまさに宿主を締め付けているように見えますが、実際には「絞め殺す」わけではなく、宿主の表面を覆い、より高く葉を広げることで日光を遮って枯らしてしまうようです。
正反対の印象を与える名前を持つガジュマル。当園のガジュマルは気根で宿主のイヌマキを覆い、さらに同じ仲間のアコウがその上に着生して複雑に絡み合った姿を見せています。温室の中でも日光をめぐる生存競争が静かに繰り広げられています。
③ガジュマル |
④ヒスイカズラ【マメ科】
ヒスイカズラ(翡翠葛)は青緑色の房状の花を咲かせるつる性の植物で、鮮やかな色と人工物のような花の形に驚かされます。開花期は3月~5月頃で、この花を目的に訪れる方も多い人気の植物です。原産地はフィリピンですが、現地では絶滅の危機に瀕しているとのことです。
自然界ではオオコウモリが花粉を媒介することが知られており、この花の色と形はそのために特化されたもののようです。植物の中には特定の昆虫や動物が花粉を媒介するものが少なくありませんが、これは同じ種類の植物に花粉を運んでもらうために進化した結果だと思われます。
ヒスイカズラの場合、独特の色はコウモリが好む色で、花が房状につく形状はコウモリがぶら下がるのに都合がよく、一つ一つの花はコウモリだけが蜜を吸える形になっています。さらにコウモリが蜜を吸うために口を突っ込むと雄しべが出てきて花粉がつける仕組みや、雌しべの先にキャップのような覆いがあって最初のコウモリでは(自らの花粉では)受粉せず、次のコウモリが他の花の花粉をつけてきたら受粉する仕組みなど、とても巧妙な仕組みを持つ神秘的な植物です。
④ヒスイカズラ |
⑤フウリンブッソウゲ【アオイ科】
フウリンブッソウゲ(風鈴仏桑花)は東アフリカ原産のハイビスカスの一種で、ブッソウゲはハイビスカスの和名です。花弁がそり返って球状に見える花が垂れ下がり、風に揺れる姿はまさに風鈴のようです。熱帯では通年で開花するようですが、当園でも初夏から秋にかけて長い期間花を楽しむことができます。
おなじみのハイビスカスとはかなり違う印象を受けますが、様々な色や形の花をつけるハイビスカスに共通の特徴は、花びらが5枚あることと、雄しべと雌しべが一体になった花柱が花の中心から垂直に突き出していることで、フウリンブッソウゲもその特徴を備えています。
深い切れ込みが入った花びらの形や色が珊瑚に似ていることから「コーラル・ハイビスカス」とも呼ばれ、「ジャパニーズ・ランタン」の英名もあるそうです。日本にはない熱帯の植物に日本の提灯の名前がついているのは興味深いです。
⑤フウリンブッソウゲ |
⑥パラグアイオニバス【スイレン科】・サガリバナ【サガリバナ科】
パラグアイオニバスとサガリバナは、いずれも夜に開花して香りを放つ植物です。夏に行う夜間開園では、パラグアイオニバスとサガリバナの競演を楽しむことができます。
パラグアイオニバスは南米のパラグアイやアルゼンチンに自生し、花は2日にわたって開花します。1日目の花は白くて強い香りを放ち、甲虫の仲間を誘います。朝になると一度花が閉じて虫を閉じ込め、夜に再び花が開くと中にいた虫が出てきて体についた花粉を別の花に運びます。2日目の花はピンク色に変色し、香りもほとんどありません。
子どもが乗れるほど大きく、縁が立ち上がった浮葉も特徴です。毎年種から育てる一年草で、初夏から秋には屋外の池でも見ることができます。
⑥-1 パラグアイオニバス |
サガリバナは熱帯から亜熱帯の水辺に生育する樹木で、花は房状にぶら下がって咲きます。放射状についた長い雄しべが特徴で、全体がブラシのように見えます。花は夕方から開花して甘い香りでガの仲間を誘い、翌朝には散ってしまいます。当園の温室では池の上で開花し、散った花が数多く水面に浮かぶ様子は桜の花いかだを思い起こさせます。
⑥-2 サガリバナ |
⑦ショクダイオオコンニャク【サトイモ科】
最後に、世界一大きい花と言われるショクダイオオコンニャクをご紹介します。当園のショクダイオオコンニャクは、開園15周年にあたる2013年に小石川植物園から寄贈されたものです。開花は非常に珍しく、当園では9年目の2022年8月に初めて開花しました。
ショクダイオオコンニャクも夜に開花し、強い臭いを放ちながら発熱して甲虫を集めます。パラグアイオニバスやサガリバナが甘い香りを放つのに対し、ショクダイオオコンニャクは腐肉臭と表現される強烈な臭いを発するため、世界一臭い花とも言われます。
世界一大きい花と言われるのは、複数の花が集まって形成する「花序」が非常に大きくなるためで、高さ3mを超える記録も残されています。単体の花として世界最大とされるのはラフレシアで、当園ではレプリカを展示しています。
開花を見ることができる機会は非常に稀なショクダイオオコンニャクですが、機会があれば、ぜひ特異な形の大きな花と強烈な臭いを体験していただきたいと思います。
⑦ショクダイオオコンニャク(2022年8月開花) |
熱帯植物ドームには、今回ご紹介した植物の他にも、当園が収集に力を入れている熱帯性のツツジやシャクナゲ、バナナをはじめとする熱帯の果樹など、魅力的な植物がたくさんあります。残念ながら、温室は一度見れば十分と言われてしまうことが少なくありませんが、実際は季節ごとに花が咲き、実をつけ、見飽きることがありません。ぜひ季節によって違う姿を見せる植物たちに会いに来ていただきたいと思います。
県立植物園HP https://botanical.greenery-niigata.or.jp/
(挿入写真)
①~⑤:筆者撮影
⑥、⑦:新潟県立植物園
(参考文献)
新潟県立植物園「ようこそ緑の夢王国 県立植物園」(新潟日報事業社、2003年)
新潟県立植物園研究報告 第1号(新潟県立植物園、2023年)
WEBサイト「かぎけん花図鑑」(株式会社科学技術研究所)
(執筆者)
高橋 忠栄
新潟県立植物園 園長
技術士(総合技術監理部門・建設部門)
元 村上地域振興局長
※)当サイトの内容、画像等の無断転載を禁止します。
2024年8月1日 高橋忠栄
このたび、県友会ホームページに「植物園だより」を連載させていただくことになりました。拙い文章ですが、県立植物園で栽培している植物を中心に、植物の美しさや不思議さをお伝えできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
第1回は食虫植物を取り上げます。毎年夏休みの時期、植物園では子どもたちに人気の食虫植物をテーマにした展示を行っています。私も子どものころ食虫植物を育てていました。虫を捕らえる仕組みや形の面白さに惹かれ、中でも筋肉も無いのに素早く動くハエトリソウは本当に不思議でした。そんな食虫植物の魅力をお伝えできればと思います。
1. 食虫植物とは?
食虫植物は、湿地や岩場など土壌の栄養分が少ない環境で生きていくため、巧妙な仕組みで虫を捕らえ、自らの栄養にして育つ植物です。熱帯の植物という印象が強いですが、日本にもモウセンゴケやムシトリスミレ、タヌキモなどが自生しています。
もう少し細かく見ると、食虫植物は、①誘引:虫をおびき寄せる能力、②捕獲:虫を捕まえる能力、③分解:虫を溶かして養分にする能力、④吸収:養分を吸収する能力、⑤養分活用;吸収した養分を成長に使う能力、の5つの能力を持つものとされています。しかし食虫植物という区分は不明瞭な部分があり、食虫植物に区分されている植物がこれらの能力をすべて備えているわけではありません。ポイントは⑤の養分活用だとされていますが、最も確認が難しいのがこの項目のようです。
2. いろいろな食虫植物
食虫植物が虫を捕らえる仕組みは、大きく次のように分けられます。
①落とし穴式:落とし穴のような袋の中に落として捕まえる。
②挟みこみ式:葉で挟みこんで捕まえる。
③粘着式 :葉から粘液を出して捕まえる。
④吸い込み式:袋の中に吸い込んで捕まえる。
⑤迷路式 :罠の中に迷い込ませて捕まえる。
次に、それぞれの代表的な種類をご紹介します。
①落とし穴式
〇ウツボカズラ
食虫植物の代表的な存在で、葉から伸びた「つる」の先端につぼ型の捕虫袋を付けます。ふたの裏側の密腺から出る香りで虫を誘い、滑りやすくなっている袋の縁から虫が中に落ちる仕組みです。袋の内側も滑りやすく、虫が這いあがれないようになっています。袋の中には水が溜まっていて、分泌される消化液で消化吸収します。
捕虫袋の色や形、大きさは種類によって様々で、その多彩さが大きな魅力になっています。自生地の環境によって生態も様々で、虫ではなく落ち葉を栄養にしたり、動物のフンを栄養にしたり、アリやコウモリと共生したりするものが確認されています。大きな捕虫袋を持つ種類では小鳥やネズミが捕まることもあるようです。
東南アジアなど熱帯・亜熱帯の広範囲に多くの種類が自生し、人工交配によって作り出された品種も数多くあります。
ウツボカズラ |
〇サラセニア
筒状に伸びた葉に虫を落とし込んで捕らえます。筒状の葉は内側が下向きの細かい毛で覆われ、落ちた虫が逃げられない仕組みになっています。捕らえた虫は消化酵素や共存するバクテリアによって分解、吸収します。美しい網目模様を持つものが多く、花も特徴的です。
和名はヘイシソウで、形が「瓶子」と呼ばれる酒器に似ていることから付けられました。神棚にお酒を供えるときに使われる容器と言うと分かりやすいでしょうか。
原産は北アメリカで、日当たりのよい湿地に自生します。原種は8種類ですが、多くの自然交配種、人工交配種があります。
サラセニア |
②挟みこみ式
〇ハエトリソウ
二枚貝を開いたような形の捕虫葉を持ち、葉の内側から出る香りで虫を誘います。葉の内側に3本ずつ計6本の感覚毛が生えていて、この感覚毛に2回触ると葉が閉じて虫を捕らえます。その反応時間は約0.5秒と速く、素早い動きをする食虫植物の代表選手です。
葉が閉じる動きは細胞の水の出し入れによる圧力の変化で生まれるようですが、それだけでこの素早い動きを説明するのは難しいようです。開いた状態の葉を見ると凸型に反っているのが分かりますが、その状態で溜まっている「ひずみ」のエネルギーを使って葉の形を元に戻すことで素早い動きを可能にしているとのことです。この動きを「コンタクトレンズの凸面をへこませるとパッと元に戻る動きに似ている」と説明する資料もありますが、イメージできますでしょうか?
また、感覚毛に2回触らないと葉が閉じないのは、生き物以外に反応するのを防ぐとともに、獲物を確実に捕らえるためだとされています。葉が閉じるのは2回の間隔が30秒以内の場合で、これはハエトリソウが30秒という時間の経過を記憶していることを示しています。進化の不思議さを感じさせる、とても興味深い植物です。
原産は北アメリカで、東海岸の限られたエリアの湿地に自生し、原種は1種類です。
ハエトリソウ |
〇ムジナモ
姿がムジナの尾に似ていることから命名された水草で、車輪状に配置された二枚貝のような捕虫器でミジンコなどを捕まえます。捕虫器の形はハエトリソウに似ていますが、感覚毛の数は多く、1回触れるだけで閉じます。閉じる速さは約0.02秒と非常に速いです。
日本では牧野富太郎博士が1890年に発見し命名しました。その場面は2023年のNHKの朝ドラ「らんまん」でも描かれましたので、記憶されている方も多いと思います。
かつては新潟県にも自生していましたが、残念ながら既に絶滅しています。国内でも人為的に導入されたものを除けば自生地が失われたと考えられていましたが、2022年に石川県の農業用ため池で発見され、現存する国内唯一の自生地だと考えられています。
ムジナモ |
③粘着式
〇モウセンゴケ
葉にたくさんの腺毛が生え、腺毛の先端から粘液を分泌しています。その粘液で虫を捕らえると、それに反応して他の腺毛が虫の方に向かって倒れ、種類によっては葉の部分も虫に巻きついて虫の自由を奪います。捕らえた虫は粘液に含まれる酵素で分解し、腺毛から吸収します。
世界中に広く分布しており、日本でも湿地や山間の湧水の近くなどに自生しています。尾瀬などの湿原を散策すると、木道の脇の足元に多く姿を見ることができます。
モウセンゴケ |
〇ムシトリスミレ
葉の表面から粘着液を分泌して虫を捕らえます。虫を捕らえると虫に接する繊毛が縮んで虫の体が葉の表面に接するようになります。同時に葉の表面が浅く窪み、その窪みに消化液が溜まって虫を消化吸収します。
世界中の広い範囲に約80種が分布し、日本でも2種が自生しています。スミレの仲間ではありませんが、花がスミレに似ているためこの名前が付けられました。
ムシトリスミレ |
④吸い込み式
〇タヌキモ・ミミカキグサ
捕虫嚢と呼ばれる袋状の捕虫器に、ミジンコなどを吸い込んで捕らえます。水中に浮遊するものと湿地に生えるものがあり、前者をタヌキモ、後者をミミカキグサと呼んで区別しています。捕虫や消化の仕組みはほぼ同じです。
捕虫器は内部の水を外に出すことで低圧状態に保たれ、つぶれた形になっています。そして捕虫器の入口をふさぐ弁の毛に獲物が触れると弁が開き、水と一緒に捕虫器の中に吸い込みます。それに要する時間は1000分の10秒から1000分の15秒と極めて短時間です。その後、消化液を分泌して消化吸収します。
自生範囲は広く、日本でも各地の沼や池、湿地などで自生が確認されています。
ミミカキグサ |
⑤迷路式
〇ゲンリセア
タヌキモに近い種類ですが虫を捕らえる方法は独特で、地中に逆Yの字型の捕虫器を持ち、原生動物などの小さな生物を捕らえます。捕虫器はらせん状で、中には奥に向かって毛が生えており、獲物がらせんの隙間から中に入ると後戻りできなくなります。その仕組みはウナギなどの魚を捕らえる筒状の罠(ウナギ筒)に例えられます。
南アメリカとアフリカの熱帯域に30種類が自生しています。
※)県立植物園では栽培していません。
3. 県立植物園の食虫植物コレクションより
食虫植物の中でもウツボカズラは代表的な存在で、県立植物園でも多くの品種を栽培しています。最後に、その中から特に珍しい品種、ぜひ見ていただきたい品種をご紹介します。
〇巨大な捕虫袋を持つ3種【今回初公開】
・トランカータ×ペルタータ(交配種)
・ラジャ×バービッジアエ(同)
・グランディフェラ×バービッジアエ(同)
トランカータ×ペルタータ | ラジャ×バービッジアエ |
グランディフェラ×バービッジアエ |
〇エドワードシアナ
虫を取り込む縁の部分の美しさが特徴。
〇キエリウツボ
黄色味を帯びた広い「えり」が特徴。
〇シビンウツボ
ふたから出す分泌液を舐めに来るツパイという動物のフンを栄養として利用する。形が尿瓶(シビン)に似ていることからこの和名が付いた。
エドワードシアナ | キエリウツボ |
シビンウツボ |
厳しい環境の中で生き残るため、様々な仕掛けで虫を捕らえ、栄養とするために進化した食虫植物。その個性的な形や生態には本当に驚かされます。興味を持っていただいた方は、ぜひ植物園に足をお運びください。
新潟県立植物園 企画展示「とことん食虫植物展〜ジャングルラボへようこそ!〜」
開催期間:7月10日(水)~9月8日(日)
県立植物園HP https://botanical.greenery-niigata.or.jp/
(挿入写真)
筆者撮影
(参考文献)
土井寛文「食虫植物ハンドブック」(双葉社、2014年)
田辺直樹「世界の食虫植物図鑑」(日本文芸社、2020年)
福島健児「食虫植物-進化の迷宮をゆく」(岩波書店、2022年)
野村康之「あなたの知らない食虫植物の世界」(化学同人、2023年)
(執筆者)
高橋 忠栄
新潟県立植物園 園長
技術士(総合技術監理部門・建設部門)
元 村上地域振興局長
※)当サイトの内容、画像等の無断転載を禁止します。
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